エミールギレリス【売約済】ギレリス／ベートーヴェンピアノ・ソナタ第29番《ハンマークラヴィーア》

ベートーヴェン
ピアノ・ソナタ第29番変ロ長調作品106《ハンマークラヴィーア》

エミール・ギレリス(ピアノ)
録音:1982年

1972年から始まったギレリスのドイツ・グラモフォンへのベートーヴェン・ソナタ・シリーズの第9作。驚くほど高い透明度を持った演奏で、このシリーズの中でも白眉といえる名演です。全体の演奏時間は49分近く、他の演奏と比較すればポリーニは42分、アシュケナージが45分、テンポの速いグルダでは37分しかかかっていません。ギレリスの演奏が全体的に遅すぎるという訳ではありませんが、アダージョの第3楽章と最後の第4楽章をじっくりと深く弾きこんでいるのが特徴的です。この深い呼吸と透明度が高い音色がギレリスのベートーヴェンといえるかもしれません。2017年刊行の名曲名盤500では、ポリーニ盤に次いで第2位に選定されています。グラモフォン賞受賞盤です。

20世紀を代表するロシアの巨匠ギレリスによるハンマークラヴィーアです。楽曲構成、テンポ、表現において全く奇をてらった所がなく自然に奏でていながら、40分弱に及ぶ長大なソナタを全く飽きることなく聴き通させる力量に感服します。第一楽章冒頭から力むことなく堂々と確固としたテンポで始まり、煌くような美音と正確なタッチで高貴なベートーヴェンの世界に引き込んでいきます。対位法を駆使した展開部がこの楽章にアクセントを与えています。圧巻は第三楽章で全体に深い精神性に満ち溢れていますが、とりわけ中間部の感情に流されず切々と歌い上げる情感のこもった音楽は誠に感動的。そして、第四楽章の序奏を経てフーガに突入、各声部の旋律が鮮明に生き生きと奏でられ、絡み合って目くるめく世界を展開していきます。途中、一旦静まってフーガの第二主題を提示し二重フーガとなり旋律が錯綜しながら一気にコーダに持ち込み大きな感銘とともに曲を締めくくります。

国内盤、帯無し、盤面傷無し　14

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